■能動読み■


現代の読書に求められるのは、能動的な態度です。
そこで今日は
「主人公がどこで恋をしたか自由に決められる文章」
をやってみたいと思います。
①〜⑥の好きなタイミングで主人公に恋をさせてください。

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冬、僕の住むこの小さな町は、雪で真っ白になる。
「来ないですね、バス」①
声の主の彼女は、さっきからバス停の時刻表とベンチとの間を何度も往復していた。
「あ、ほら、今日雪がひどいからさ」
僕はそう答える。男の友達と話すときとは違うタイプの声になった②。
そうですか、と彼女はようやく往復をやめ、ベンチに腰を下ろした。
僕の半分ぐらいしかなさそうな彼女の重みでも、ぼろいベンチは立派にきしむ。
単語カードを見るふりをして、横目で彼女の様子を覗いてみた。
うちの学校とは違う制服③。浜女子の生徒だろうか。


しかし、彼女が降りたのは、僕と同じ「一高前」のバス停だった。


「今日から同じ学校ですね」④
そう言い残し、彼女は、新しい校舎をきょろきょろと見回しながら、職員室に続く長い廊下を歩いていった。
その足音が耳から離れないし⑤、足音の主は隣の席に座っているしで⑥、いつまで経っても勉強に集中できない。

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以上です。


ちなみに僕は、②で恋をさせました。
②でさせて、⑤でこじらせさせました。